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下のシンポジウムの報告要旨を紹介します.
報告要旨
日本型福祉国家の成立過程とジェンダー関係
木本喜美子(一橋大学)
本報告は,日本型福祉国家の形成過程が付与したジェンダー関係の特質をとら
えようとするものである.
福祉国家をジェンダー化するという課題,すなわち福祉国家の組織編成原理に
埋め込まれているジェンダー関係を可視化するという課題は,欧米では,1970年
代からのフェミニストによる福祉国家批判に端を発し,一定の研究史をもってい
る.そこでは主として,福祉国家が前提としてきた家族像をめぐるジェンダー関
係に批判的考察が加えられてきた.だが日本ではこうした問題関心は,比較的近
年のものであり,社会政策・社会保障体系にかかわる個々のイッシューが検討さ
れてきている段階にある.本報告は日本型福祉国家がいかに歴史的に形成された
のかを明らかにすることから,「日本型」の特質を把握し,1990年代の変動の意
味を考えようとする..
そこで,日本型福祉国家の成立・展開過程をとらえるために,第二次大戦後の
高度経済成長期を重視して分析する必要がある.結論を先取りして言えば,日本
型福祉国家には三つの特徴がある.その第一は企業福祉の先行,第二は旧中間層
の社会統合としての性格,第三に日本型近代家族モデルがその規定に据えられた
ことである.これがオイル・ショック以降1980年代にかけて変動しつつ,1990年
代の大変革期をむかえている.
家族政策とジェンダー
山田昌弘(東京学芸大学)
近代社会の理念が,自由,公正,効率(ケインズの3原則)にあるとすると,
福祉国家においては,市場が,「自由の拡大」「効率の上昇」をめざし,福祉国
家が「不公平の是正」をめざすものという了解がある.しかし,市場と国家(公
共セクター)に「家族」という領域を加えてみた場合,まったく違った様相が見
えてくる.
近代家族は,近代社会の理念と真っ向から対立する領域としてある.近代家族
は,不自由,不公平,非効率の場である.家族は,選択できないし,勝手にやめ
ることができない.どの親から生まれるかによって,成長期の生活環境の差はは
なはだしいものがある.また,家族に要介護者がいるかいないかによって,生活
の苦労の量の差は,はなはだしい.家事のしかた,「愛情」の生産のされかたと
いう点から見ても,非効率な制度である.
従来は,家族はすばらしいという幻想,家族の愛情という名で,不自由,不公
平,非効率が表面化するのを防いでいたともいえる.
家族幻想が崩れ,家族領域においても,自由,公正,効率.家族における不自
由が表面化し,それを社会的に処理する必要性が生まれてきた.その際,ジェン
ダー差が問題になる.従来の「専業主婦体制」では,女性の方に,不自由,不公
平,非効率の被害が及ぶ可能性が多かったからである.それは,生活のため嫌な
相手と離婚できないという不自由,自分の努力でなく,夫の収入によって生活が
決まるという不公平,家事の負担が一方的にかかり,自分に責任のない負担がか
かるという不公平などである.
国家,政府,公共団体は,これらの問題を処理するために,従来の最低水準保
障の家族政策から,家族の不自由,不公平,非効率を改善するための政策に乗り
出している.しかし,このトレンドは,家族に対する見方を根本的に変動させる
ものとなる.また,自己責任に基づく,家族の中にも競争原理(魅力の競争な
ど)が入らざるをえなくなる.
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~takegawa/
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